熱帯医学の国際学会に参加しました

PMS医師仲地省吾
ペシャワール会報74号より
(2002年12月18日)

腹部超音波検査をする医療スタッフ
 11月20日から22日まで、タイのバンコクでJoint International Tropical Medicine Meeting 2002という国際熱帯医学会がありそれに参加してきました。当院からも演題を一つ持っていき発表してきました。演題名はClinical features and early diagnosis of typhoid fever というものです。当地では腸チフスが風土病の様になっていて、夏にはたくさんの患者さんが当院に入院してきます。ほとんどが小児患者さんです。

 腸チフスとはサルモネラに属する菌によって起こる感染症です。日本では今ではもちろん経験することのない感染症です。腸チフスは早期に診断し適切な抗生物質を投与すればほとんど完治しますが、治療が遅れると重篤な合併症(腸穿孔や全身感染症など)を起こし、死亡することもあります。

 ただ早期の腸チフスは高熱以外にこれといった特徴的症状に乏しく診断に苦慮します。確定診断は血液培養でできますが、この検査は時間と金がかかり、当院のようなNGOの医療機関ではあまり実用的ではありません。幸いに当院では腹部超音波検査器を保有しており、腸チフスの患者さんは高率で腸間膜リンパ節が腫大していることを発見していました。

PMS病院で研修を受ける地元の医学生達
腸チフスの病態から考えるとこれは当然のこととなりますが、3、4年前からすでに実際の診断に役立てていたというのは当院の優れた業績の一つだと思います。これは以前赴任していた小林先生が現地医師達に指導し根付かせた実績の一つです。

 今回私は多数の腸チフスの患者さんに実際に血液培養を実施し、医学的に確定できた腸チフス患者と腹部超音波による腸間膜リンパ節腫脹の関連性を調べました。それによればやはり腸チフスの患者さんには超音波によって高率で腸間膜リンパ節腫脹を描出できることが証明できました。演題では、腸チフスの早期診断として超音波による腸間膜リンパ節腫脹の描出の有用性を強調して発表しました。

 初めての国際学会でしたが、演題内容はペシャワール会の英語のプロの松岡さんや沢田さんの協力、そして中村先生の指導も得て無事に発表することができました。尚スライドはペシャワールで作成するのが困難なことが判明し、直前になってから日本にインターネットでスライドファイルを送り、スライドになったのを、ちょうどペシャワールに来るワーカー(藤野さん)に持ってきてもらうという芸当もしました。



学会会場にて仲地医師とヌール・アガ医師
 今回の学会には現地医師のDrヌールアガを同行させました。現地医師団の中でも最も優秀なリーダーの一人です。国籍がアフガニスタンでもあるためか、タイ入国のビザを取得するのに大変苦労しました。早々と学会からの招待状や主催大学であるタイのマヒドール大学の招待状なども得ていましたので、簡単に取れるだろうと思っていましたら、タイ大使館の回答は「アフガン国籍者についてはタイ外務省からの入国許可が必須」とのことだったので、大変驚いてあわてました。学会関係者と何度も連絡を取り、いろんな書類を送りましたが、なかなか許可が出ず、一時はあきらめていました。外国の学会に連れて行くなどと期待を持たせて悪かったかなと思っていたところ、なんと出発の三日前にタイ外務省から入国許可が来て、タイ大使館に出かけてビザを取得したのは出発の前日でした。

 学会とそれから短いながらもDrヌールアガとのバンコクの観光旅行は多少のハプニングもありながら、とても楽しく有意義でした。Drヌールアガのビザの取得に尽力してくれた学会関係者にはもちろん丁重にお礼をしてきました。Drヌールアガは多少のカルチャーショックを受けていた様ですが、当院の将来のリーダーとしてとても良い経験になったのではと思います。そして、このように外国での国際学会にも参加できたということは他の医師団やPMSスタッフにも励ましになったのではないかと思っています。

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