頼もしきアフガン・レイバーたちと

灌漑用水路計画担当 鈴木 学
ペシャワール会報81号より
(2004年10月13日)

スタッフハウスでの流しそうめん
(左より橋本、佐々木、川口、現地スタッフ、
鈴木学ワーカ)
噛みしめた「流しそうめん」

9月2日。木曜のこの日は、こちらでは週末に当たる。金曜日はみなモスクでお祈りをする安息日で仕事は休みだ。カナル(水路)スタッフも勤務時間(5時半〜13時半)が終わるとみな引き潮のごとく家路を急ぐ。給料日と重なったこの日は尚更で、真剣を通り越して殺気立つ。客観的に、仕事のときより険しい表情のスタッフが多いと思う。見ているこっちが笑ってしまうほどだ。ジャララバードに乗っていく車が無いと騒いでいる。スタッフ全員が車に乗れたのをヌールザマーンと確認して、自分たちも帰路に着く。木曜だけはほぼ毎日の残業もなし。自分はこの週末の感じが大好きだ。「ああ、今週も無事に終わったなー」と、嬉しさをかみしめる。

ジャララバードのスタッフハウスに帰り着く(午後3時)。そのまますぐにそうめんを食べる準備を始める。日本から送ってもらったそうめんを茹で、麺つゆを作り、海苔を切り、粉末生姜をとく。橋本さんが帰ってきて流しそうめんをすることになる。なんと竹も準備してきている。感謝しながら皆で流しそうめんを食べる。アフガンで我々が最初だろうか。流しそうめんとともに夏が過ぎ去るのを実感する。こちらはもう秋である。


聖牛作り
作業員の多くは貧しい小作農

今回は自分と共に毎日作業しているレイバー(現場作業員)たちのことを少し紹介しようと思う。自分が直接関係するのは蛇籠作成レイバー(=作業員。蛇籠用の網を編む、その網で箱を組み立てる)、鉄筋加工レイバー(鉄筋を真直ぐに伸ばす、切る、曲げる)、鉄筋コンクリート打ちレイバー(鉄筋を配置してワイヤーで縛る、ミキサーでコンクリートを打つ、その他)と大きく三つのグループに分けることができる。自分は現在コンクリート構造物全般の作業を手がけているため、鉄筋コンクリート打ちレイバーと大半の時間を共にしている。

彼らの多くは水路建設現場の村に住む。取水口付近に使われた大量の“聖牛”作りに始まり、冬は取水口の鉄筋コンクリート工事、今は二つの道路の下に水路を通す工事を終えた後、雨水排水用暗渠、水道橋、池の新水門の工事中と、1年以上自分と一緒に鉄筋コンクリートの作業に携わってきた。仕事内容はモールド(鉄筋コンクリート用の型枠)用のコンクリートブロック作製、鉄筋切り、鉄筋組み、左官と一緒にモールド作り、ミキサーの整備と設置、ミキサーからモールドまでの枠の設置、そしてパキスタン製のすぐ壊れるミキサーを修理しながらのコンクリート打ち作業などである。

スランプール平原(もともとダラエヌールから水を引いていたが、現在は耕作不能地となっている)に道路を横切って水を通す“伏せ越し”部分の天井コンクリート打ち作業
作業現場近くに住んでいるため残業や緊急時にも無理を聞いてくれ、自分の手足となって本当によくやってくれている。皆貧しい小作農民で子供も多い。父親が死んだ子供も働いている。私も兄弟が多く、小さい頃から農作業等をよく手伝っていたので彼らの気持ちが分かる。

鉄筋コンクリート作業でもこちらにある道具や機械での手探りから始まった。砂利の質が良くないため、こちらではあまり使用しない太く丈夫な鉄筋を使い、それを組むために蛇籠用の強いワイヤーを使用するなど独自の方法を作り出した。

自分が学校で学んだ理論はこちらのエンジニアも多少は知っている。ただ、過酷な条件の中で現場の状況に合わせてどれだけ根気強く基礎から手を抜かずにやれるかは、日本人である自分の具体的な指示と判断力、士気を保って先頭で作業する姿勢にかかってくる。同時にそれに応えられるチームワークと残業をものともしない体力を持つレイバーたちの力が必須だ。時に自分以上に勇敢に作業に向き合ってくれる彼らと、共に仕事ができる喜びを日々感じながら働いている。


用水路工事現場での蛇籠の設置作業
必ず水を――

もちろんPMSスタッフにも強者が揃う。

言語能力が高く、中村先生の指示を的確に守って現場をコントロールするのがヌールザマーン(27歳、この前最初の男児誕生)。大学卒業後PMSでダラエヌールの井戸掘削計画に携わり、水路建設が始まると同時に現場責任者となる。ずっと現場の叩き上げだ。重機のアレンジからカナルに関係する多くの問題処理まで一手に引き受け、2年目の現在まさに獅子奮迅の活躍中。
時には自分が止めに入らなければならないほど熱くなる場面も少なくないこの熱血漢がいなければ、水路建設の困難な現場を取り仕切ることはできない。爆破班を率いて数々の岩山を粉砕してきたザルマイや、取水口斜め堰の建設以後、巨石ハンターとなったローダ運転手ザキルラーなどみな個性豊かだ。


巨石運びのホイールローダ
9月9日(木)。
3年前のこの日マスード将軍が暗殺され、その関係で昨日から連休になっている(水曜に突然通達があった。アフガンでは休日の前日に政府から発表がある。かなり迷惑なのだが、もちろん現地スタッフはみなハッピーである)。

鬼木さんが一時休暇から帰ってきた。相変わらず元気である。中村先生も近く現場に入られるそうだ。カナル秋の陣はラマダン(断食月)も含め気合が必要だ。9・11から3年。今ここでこうして水路を創っている。ペシャワール会との縁に感謝している。そして、必ず水を。

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