猛者ぞろいの掘削現場で

灌漑用水路担当 進藤陽一郎
ペシャワール会報82号より
(2004年12月15日)

測量中の進藤ワーカ
「タクラ」

初めまして。現在用水路担当の一人として働いている進藤と申します。アフガニスタンという未知であった環境での数ヵ月が過ぎました。おかげで髭も少しは伸びました。挨拶くらいは人並みにできるようにもなりました。
パシュトゥー語も少しだけ分かるようになりました。そんな僕が常々、おや?面白い、と思っている言葉があります。それは「タクラ」です。「タクラ」とはつまり気力・体力において「力強い」という感じです。例えば「タクラですか(タクライー)?」とは「元気ですか」という挨拶にあたります。また「タクラになれ(タクラシャイ)!」といえば「頑張れ(力強くいけ)!」、そして「あの車はタクラだ」といえば、故障も少なく悪路もよく走る車である事を意味します。 「タクラ」とはこのような心身の力強さを表す言葉です。  

タクラな兄さんたち
(用水路工事現場F地区。2004年12月撮影)
「タクラ」と呼べば皆が振り向く

僕がまず、おや?と思うのは、こちらの人達はこの「タクラ」という言葉を好んで使い、「タクラである事」を誇りにしているからです。例えば、用水路でレイバー(作業員)が石を運んでいるところに、「お、あんたはタクラだね〜」と声をかけると、彼は自信たっぷりな顔で、「見ろ!」と、より大きな石を持って来て見せます。また、レイバーに仕事を頼むために「ヘイ!そこのタクラな兄さん!」と呼べば、皆、当然のように「俺か?」と振り向きます。タクラである事は彼らが誇る価値なのです。  

実際、この用水路の現場で出逢う人達がなんと「タクラ」なことでしょう! 中村医師、日本人ワーカーの鈴木学さん、鬼木さん、近藤さん、川口さん、石橋さん、そして新たに、プロの現場の技術と経験を持っておられる西野さんが加わりました。皆、精神的にも肉体的にも抜群の「タクラっぷり」です。また、毎日ツルハシをふるい、蛇籠の石を積み続けている四百人のレイバー達、あらゆるトラブルに対処する総現場監督ヌール・ザマーン、物腰は柔らかくも的確にレイバーを指揮する髭モジャのヤール・モハマド、中村先生から愛称(?)で「タヌキ」と呼ばれるハマユーン、こうした頼りになるタクラなスタッフ達がいます。そんなタクラな人達と一緒に働く緊張感は、いつも僕をドキドキさせ、前へ前へ駆り立ててくれます。



タクラな人達
(右から川口、鬼木、橋本ワーカ、現地スタッフ
知識ではなく実践こそ

僕がこの「タクラ」という言葉について、もう一つおやおや?と思う点は、このように「タクラ」と呼ばれるべきものは、誰の目から見ても分かる「実質的な結果を生み出す力」である事です。つまり、抽象的に「アフガンの復興」を論じる知識によってではなく、実際に人を動かし、自ら事業を進める意志によって「ドクターサーブはタクラだ」などと言われます。
用水路現場でツルハシを振るい、土を一振り一振り削り落とす作業こそが「タクラ」と形容されます。

そして今、ペシャワール会に賛同する皆様によって支えられているPMSの事業とは、まさに「タクラ」と呼ぶべき実質的な結果を生み出す力です。その力とは、戦争、即ちテロが世界を震撼させるような恐怖の力ではなく、一人一人の生活に希望を与える小さな力の集まりです。恐らくかつては戦争で戦うために、あるいは戦争の中で生き延びる為に「タクラ」であったはずの人々が、一つ一つの小さな生活の灯りを点す為に「タクラ」である、そんな「あたりまえ」の日々がPMSから人から人へと繋がって欲しい、と願います。

タクラな兄さんたち
そしてもちろん、この会報を目にされている皆さんが、よく食べよく眠り、大切な人達と共に笑い、時には悲しむ、そんな生活の灯りと共にありますように。  

最後に、このPMSの事業を支えて来られた諸先輩方、ペシャワール会事務局、会員の皆様、また、縁あってこの会報をご覧になっている方々一人一人が、心身「タクラ」で、しあわせと共にありますように。

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