■ PMS基地病院の再編人事を終えて ■
〔PMS基地病院会計担当 村井光義〕

回診中のジア副院長(右端。PMS基地病院)

現地人スタッフが直面した雇用問題

 10月6日午後、中村先生は全職員に治安悪化のため日本人ワーカー全員の無期限一時帰国を伝えられた。そして今後職員数名の解雇が生ずること、見通しのつかない病院の行く末のため、辞職を希望する職員は各部署の責任者に伝えるようにとも伝えられた。いずれの場合も退職時には数ヶ月分の補償を約束された。これは日本人不在に加え、主にジャララバード事務所業務の立て直しをする副院長ジア先生のジャララバード異動、過去1年間学校に通い看護師助手、薬剤師助手の資格を取得する職員4名のフルタイム就業復帰により、職員1人あたりの仕事量が減るためだ。最後に、今後も今までと同じように患者のために働くことを厳命され、中村先生自身は残り、PMSは現地ペシャワールに存在意義がある限り活動を続けることを約束された。

 7日以降、何度か会計職員2人は日本人帰国後の不安を私に伝えた。もし理不尽な事態が起きたとき、日本人が去れば誰も彼らを守ってくれないという。お金を扱う部署は只でさえ、他の人から好まれないのに、まして彼らはパキスタンで少数派のキリスト教徒である。今までも注意した時や、彼らにとって不都合な病院の決定に際し、「どうせ僕たちは…」と事実に沿わない理由を言い弱い面を見せていた。イスラム教徒はキリスト教徒を蔑ろにしているわけではないが、どんな場所でも互いに共通のものがあるとやはり心を通わしやすい。その点では、少数派の弱い立場というものが確実にあるようだ。パキスタンではキリスト教徒はコミュニティーを作り助け合って暮らしている。仕事に対しては堅実である。事務職員は患者と直に接する機会が少ないため、自分の仕事が一体何の役に立っているのか不安になることも多々あっただろうが、過去10年間、日本人会計責任者が3名替わるなか、主に給料作り、会計報告、市場調査を続け、患者のために働いてきた。そして16日、彼らは辞職の意を私に伝えてきた。PMSで働くことによって給料をもらい家族を養う彼らに、日本から守り続けるなど軽々しく言えない。


14名が辞職、13名が異動

 日本人の現場での役割は、彼らが自信を持てない考えや思いの背中を押すこと、現地と日本の方法をうまく融合させ、より現場に合った方法を一緒に編み出すこと、寄付していただいたお金を現地で最大限に活かすことなどと思っていた。様々な民族、宗教、あるいは国籍がある中で、生活基盤がここにないことは彼らの身に成りきれない、彼らを心底理解し得ない欠点と思っていたが、今回唯いるだけで緩衝材のような存在になり得るという良い点があることを知った。

 最終的に職員14名の解雇または辞職、アフガン人職員13名のジャララバード異動となった。退職時の給料や異動に関する混乱は全くなく粛々とすすんだ。ある職員は明日からの不安、心配を抱えているにも拘わらず、「ありがとう」と言ってくれた。現地の人々、現地職員に対し、真摯であり続けたことが理解に繋がったのだろうか。

 会計については、予期される食糧など必需品を半年分ほど買いため、数ヶ月分の給料を準備した上で看護士2人とイクラムラ事務長に業務を引き継いだ。急造ではあったが、先日11月分の会計報告書を受信、今のところ給料や支出に対する支払に問題はないと明るい声で連絡を受けた。張り切っていることは嬉しいが、緩衝材のない今気がかりなのは職員同士の摩擦だ。

 帰国後、日本に在る流れと、あまりにも少ない現地情報のため、みんなの感情、状況を容易に知ることができず辛いが、今はPMSを離れた職員をはじめ、パキスタン、アフガニスタンに暮らす人々が家族と平穏な日々を送れることを祈り、日本で自分のできるかたちで支援していきたい。

(ペシャワール会報98号:2008年12月17日発行より)

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